過去と未来が出会う場所

「ひと」の場を構築するために

Raspberry Piの覚え書き

Raspberry Pi(以下、Raspi)とは

2006〜2007年 小型PCボードがケンブリッジ大学で開発される。
2008年 財団設立
2011年〜 世界中で流行となる
2013年 開発者の来日とともに、日本で関連本が出回り始める

開発のきっかけ

  • 1990年代の8bitや16bitのマイコンがwin/macに取って代わられた。
  • それに伴うプログラミング離れ
    • 教育の現場では、Word/ExcelやWebデザインに偏った教育が現状で、ハードウェアを操る教育がなされていない。

Raspiのコンセプト

  • 可能な限り多様な言語でプログラミングができること

    • Pi=Pythonが利用される言語の中心になるが、他の言語でプログラミングされることも念頭に置いている。
  • 子供達にとって楽しいもの。ゲームやビデオを楽しむように使えるもの

  • 小さくで頑丈。子供達が学校にも持っていけるもの

  • 低価格で学校の教材となりうること。

    • 今日では、産業用の用途が増えているため、当初の目論見とはやや外れている。

Raspiに必要なもの

1.電源ケーブル
2.microSDカード(RaspberryPi2以降)
3.画面出力ケーブル
4.キーボードとマウス
5.Wi-fiドングル(かLANケーブル)

モノづくりの哲学

1.Fab ―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ (Make: Japan Books)

Fab ―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ (Make: Japan Books)

Fab ―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ (Make: Japan Books)

パーソナル・ファブリケーション(個人的な欲求を起点として、身近な問題の解決から、結果としてものづくりを体得すること)の紹介や、その「ものづくり」の教育モデルの紹介。 「技術と職人が密接不可分に結びついていた時代[…]の工業の原点に立ち戻ることができる。」というようなことが言及されている。

今のテクノロジーは、手段が目的化されている。


「現在私たちが当たり前のように利用している大量生産のインフラストラクチャがなかった頃のものづくりは、プロフェッショナルの仕事というよりはサバイバル(生き延びるための)手段だった。」 「道具を自宅で製作できるようにする目的は、テクノロジーを創造する力をテクノロジーの利用者の手に取り戻すことにほかならない。」 (「ものづくりとは」の章)


また、LISP言語から、LOGO言語という子供向けの言語が開発されている。 人工知能モデルの開発を子供たちにやらせることを目指して開発されたらしい。 (「仕事の中の遊び」の章)


(本当は17台もの埋め込みコンピュータが、テーブルの裏面の何百個ものセンサーマイクロコントローラと接続されているのに)「コンピュータがないのはよいわ。」 (「美術と武器」の章) といった反応は、人と機械の関係を考えさせられる。そもそも何をやっているのかよくわからないのが機械なのである。


”(データアプリケーションというものは)ソーセージのようなものだ。 作られているところは、見ないほうがよい。”


2.人と「機械」をつなぐデザイン

生態心理学者の佐々木正人と著者の対談が終章に掲載されている。この中で、劣化のポジティブな価値というものが、今のエンジニアにとって有用かどうかという発想が面白い。

ドッグイヤーと称されるようなエンジニア業界で、それこそ35才引退説などと巷で揶揄されているような環境で、この発想は出てこないであろう。

芸能における人間国宝のような存在や、使い古して味の出る工業製品のようなものが重宝されるような世界が、はたしてできるのか。

人工知能は敵か味方か」というような発想を超え、AIはもはや当たり前のように介在し、遍在化してきていて、我々の意思決定や行動のきっかけを(良くも悪くも)与えてしまう存在となってきている。 今はまだ「便利」だとか、あるいはロボットの「かわいらしさ」だとか、「有用」なことが善であるような環境のものづくりの世界から、徐々に、いろいろな技術が蓄積されていき、学ぶは「まねぶ」という発想の徒弟制度のような世界が立ち現れてくるかは、未だ不明である。



3.ヒトと機械のあいだ―ヒト化する機械と機械化するヒト (シリーズ ヒトの科学 2)

「認知=脳」という考え方を超えた、身体そのものの特性(環境との接続)を活かす研究が紹介されている2007年の著作。

機械は、単独で存在する冷徹なイメージから、ヒトと共に進化を歩む道に徐々に近づいてきている。

一方で、急速な情報インフラの整備によって、身体の消滅(実際に行って、見聞きしていないような情報でも信じることがあたりまえとなるように)であったり、巨大なデータを解析できるようになって、身体に関わる全ての行為が、(生身の身体さえも)データとして扱われてしまうようになった。

その中で、システマティックな方法とは異なる、身体に根ざしたラディカルな方法論で情報社会を捉える研究が盛んになってきている。



4.触楽入門

触楽入門

触楽入門

もっとも根源的な感覚は、触覚である。 (赤ちゃんの知覚) 母体の中は暗闇なのだから、まあ当然のことです。 しかし、大人になると、触覚が退化(?)し、視覚聴覚優位となります。

私たちは、触覚という感覚を通して、忘れてしまった過去の歴史を発掘する作業をしなければいけません。 視覚は攻撃的な側面もある(何も考えずに見ているときでさえ、見られる側は何かのメッセージを受け取っていることもある)のだけれども、触覚は情報として伝えることが容易ではない感覚でのため、そのさわり心地を言語化してみることが大切です。

そうすることによって、多くの感覚を発見することができる訳です。

そのためのアイデアがいっぱい詰まっている本です。また、たくさんのイラストが、イメージを膨らます手助けとなってくれることでしょう。



5.情報を生み出す触覚の知性:情報社会をいきるための感覚のリテラシー (DOJIN選書)

触覚の特徴を確認してみる。

1.「モノを見る」と「モノに触れる」ということの違い。 視覚は一挙にわかるが、触覚はそうではない(目隠しをしてモノに触れて、それが何かを当てるゲームがあるように)

2.不要なものは無視して対象化しない働きがある。(足の裏の感覚)→意識せずに「分かっている」ことがある。

3.触れる、触れられるという図式は、身体と文字通り「密接」している。(触れられる感触が心地よく感じる効果がある) 他の感覚はどちらかといえば、支配、被支配の関係である。

4.皮膚感覚は、「分かる」手前で起きている。(とっさに避ける行為と同じように、不気味なモノに遭遇すると鳥肌が意識せずに立つ)

5.情報として拡散されない。(この本がはじめての「触知情報学」の試みであるように)

6.分析することが容易でない。この本のように、分析ということがそのまま、触覚の世界の内実を発見し、構成する試みとなっている。

例えば、「触譜」という試みがある。これは、映画鑑賞や音楽鑑賞のように、触覚を鑑賞する試みである。楽譜のように「触譜」を書く。この開発で、なんらかのイメージや感情を伝達することができる。

また、巻末の紹介本も有用である。 行動神経科学者ダマシオのソマティック・マーカー仮説や、西垣通の基礎情報学なども取り上げられている。



6. 第三の脳――皮膚から考える命、こころ、世界

第三の脳――皮膚から考える命、こころ、世界

第三の脳――皮膚から考える命、こころ、世界

常識を打ち破るためのエッセンスが多く詰まっている。

・生体の内部環境では、因果律、時間(過去が未来を決定する)の概念が通用しない可能性がある。(p.204)

・絶対(常識)などということは、生物の進化を見ても存在しない。マトゥラーナとヴァレラのオートポイエーシスの概念は、外部からシステムの組織構成への何らかの介入が生じた場合、それは単にシステム自体の損傷を意味するだけである。→非因果律(p.208)

・目で見た世界では説明がつかないことが、皮膚から考えると理解できる。(皮膚感覚は暗黙知)(p.217)

・生命と環境の物理的境界が、皮膚である。皮膚が、感じ、判断し、形を変えるシステムを持つ。内と外を区別することは、自律的である。(表皮の形成)(p.206)

手で動かして学ぶデータサイエンス本(データ取得、加工、解析)

とっつきやすさ順に…

1.Rubyによるクローラー開発技法 巡回・解析機能の実装と21の運用例

Rubyによるクローラー開発技法 巡回・解析機能の実装と21の運用例

Rubyによるクローラー開発技法 巡回・解析機能の実装と21の運用例

web api関連の学習本。 Anemoneでクローリングするものが多い。



2.JS+Node.jsによるWebクローラー/ネットエージェント開発テクニック

機械学習とその学習のためのデータをどのように取得するかが学べる。



3.関数型オブジェクト指向AI プログラミング―Scala による人工知能の実装

関数型オブジェクト指向AI プログラミング―Scala による人工知能の実装

関数型オブジェクト指向AI プログラミング―Scala による人工知能の実装

scalaの学習にも使える本。 最終章のディープラーニングの実装は、やや本格的。



4.フリーソフトではじめる機械学習入門

フリーソフトではじめる機械学習入門

フリーソフトではじめる機械学習入門

機械学習関連のトピックスを網羅的に紹介している。



5.Think Stats 第2版 ―プログラマのための統計入門

Think Stats 第2版 ―プログラマのための統計入門

Think Stats 第2版 ―プログラマのための統計入門

Pythonを使い、実際に手を動かしながら統計が学べる。 Anaconda、pandasなどのライブラリを学べる。

6.Sparkによる実践データ解析 ―大規模データのための機械学習事例集

Sparkによる実践データ解析 ―大規模データのための機械学習事例集

Sparkによる実践データ解析 ―大規模データのための機械学習事例集

自分で何かを作ってみようとするときに、有用なアイデアがたくさん詰まっている本。 何か一つでも気にかかった章があれば、そこから自分の作りたい構想を膨らませていけば良い。

読書まとめ(3/31〜4/21)

1.身体化された心―仏教思想からのエナクティブ・アプローチ

身体化された心―仏教思想からのエナクティブ・アプローチ

身体化された心―仏教思想からのエナクティブ・アプローチ

エナクティブ・アプローチ(行為から産出される世界)を通して、現象学的アプローチの問題点を、多くの事例を示して指摘している。

なお、本書の真髄は、瞑想経験のように、行為、実践を伴ってエナクティブな感覚を会得するものだ。理論はその後に付いてくるものであり、この点において、通常の読書(なにかを理解すること)とは異なる。いわば体験の書である。

仏教の経典のように何度も読みながら、エナクティブ・アプローチの輪郭を感じ取ろう。



2. 現れる存在―脳と身体と世界の再統合

現れる存在―脳と身体と世界の再統合

現れる存在―脳と身体と世界の再統合

本書では、ヴァレラが反対した「認知の本質は表象である」という考え方に好意的である。 情報処理に基づく分析手法(ただし、中央集権的ではなく、再帰的ネットワークという)を多用している。 このような科学的アプローチを媒介にして、身体・行為・世界から心を説明する試みを可能にしている。



3.知能の原理 ―身体性に基づく構成論的アプローチ―

知能の原理 ―身体性に基づく構成論的アプローチ―

知能の原理 ―身体性に基づく構成論的アプローチ―

ロボット開発が持つ問題点 「参照フレーム問題」(ロボットへの行為の命令にたいして、従来のデータベース的な解決策では、記憶領域が爆発してしまう) 解決策 そもそも生命は環境との相互作用から行為を産出する。 つまり、それが何かを知ることなく、なにをするか(どこに進むか)を決められる。

ニューラルネットワーク問題」(強力な並列プロセッサがあったとしても、それだけではロボットのためのニューラルネットワークの設計問題を解くことにはならない。)

解決策 ネットワークはロボットの形態とともに開発する。 環境との能動的な相互作用を利用することで、感覚刺激をうまく生成する。

ありが作る行列は、なぜそうなるのか、いったいどうやれば良いかという問いかけを無効にする。このような自己組織化の考え方と、「知能は身体を必要とする」という身体性を有するシステムをミックスさせた、人工知能、人工生命の新しい地平を示している。



4.野性の知能:裸の脳から、身体・環境とのつながりへ

野性の知能: 裸の脳から、身体・環境とのつながりへ

野性の知能: 裸の脳から、身体・環境とのつながりへ

著者は、主に霊長類の行動と環境・認知のかかわりについての研究者。この研究の応用として、ロボット開発のフェーズシフトを訴えている。

「脳は行動の司令官」、「脳は記憶の貯蔵庫である」という考え方を捨てて、 「身体と環境の相互作用によって行動は生まれる」「記憶は行動の再記述である」という立場から、発達心理学、生態学的心理学の知見を応用している。

第10章の発達心理学(ヴィゴツキーピアジェなどの研究)が、今後のロボット開発の重要なヒントを与えているような気がする。

気になる箇所 プリンターの中央制御司令の輻輳の解決策(p.248) 赤ちゃんの把持行動(p.259) 「身体図式」こそ知覚領域の中枢(p.254) 五感のマルチモダリティ(p.268)



5.人工知能と人工生命の基礎

人工知能と人工生命の基礎

人工知能と人工生命の基礎

人工知能に関する古今東西の研究事例を示している。 (ランダムネス・カオスの縁(カウフマン)・ベンフォードの法則・スケールフリーネットワーク

印象に残った点 1.「GOFAI」から「新しいAI」へ フレーム問題や記号設置問題などの基本的な人工知能の問題んを解決した。

人工知能とは、知能に関してのなにかしらの問題を見つけることである。問題が解かれた時にはすでに人工知能のターゲットではない。」

「人工生命ではそれが大した問題ではないことを発見し、別の形式で問題を提起した。」

2.「生命を創って理解する」という構成主義的手法

3.「生命とは情報である」 「生命とは生物的なロボットを動かすソフトウェアである」 このような考え方(還元主義)に対する批判(生物的な階層構造に、より注目する)がある。



6.生命と場所―意味を創出する関係科学 (BOOKS IN・FORM)

自律的に作動する生命としてのコンピュータの構想が、80年代に行われていた。いわゆる、ニューラルネットワーク系譜とオーバーラップするが、データを外からあたえて、他律的に(アルゴリズム的に)コントロールすることとは異なる言及がなされている。現代の人工知能に対する画一的なイメージを打破させる。



7.生命知としての場の論理柳生新陰流に見る共創の理 (中公新書)

生命知としての場の論理―柳生新陰流に見る共創の理 (中公新書)

生命知としての場の論理―柳生新陰流に見る共創の理 (中公新書)

人工知能と身体性に関わる省察

重要点 1.「リアルタイムの創出知」合気道とロボットの研究(p.23,43)

2.人工知能の理論には「脱学習」がない。(p.85)

3.科学は、対象を(自他分離的に)外側からとらえるという立場のため、「見えない自己」「見えない身体」の存在に気づいていない。また、仮に気づいたとしても、それを取り扱う論理を持っていない。(p.78)

4.3.の克服に、西田哲学の「場所」の概念とライプニッツの「モナド」の対比を援用して、「即興劇モデル」という独自の理論を生み出している。



8.生命の建築―荒川修作・藤井博巳対談集

生命の建築―荒川修作・藤井博巳対談集

生命の建築―荒川修作・藤井博巳対談集

「覚え書き」 まず身体の行為とその与えられた風景や建築的環境と、新しい知覚や感覚の降り立って行く場所とのアンバランスによって、瞬間瞬間に起こる出来事から、幾つかの振動する現象が発生するでしょう。その「遍在の場」は、必ず複数の地平を四方に出現させます。 そして、前・中・後景と呼ばれていた場所が「同化される一瞬」があるでしょう。そのときいわゆる距離と呼ばれていた現象が消失するだろうと思っています。そして、その消失によって発生したフィールドは、いろいろなテクスチャーを呼び出してくると思います。 その外側、内側、およびそれらを生成させている環境のなかに既知なこと、また何となく何かに似たり、相似した「こと」を見つけ出したときに、身体(肉体)の延長としてのお化けの遍在の場を、経験することができると思いますが……、いかがですか。



9.建築‐宿命反転の場―アウシュヴィッツ‐広島以降の建築的実験

建築‐宿命反転の場―アウシュヴィッツ‐広島以降の建築的実験

建築‐宿命反転の場―アウシュヴィッツ‐広島以降の建築的実験

エンパイア・ステート・ビルディングから飛び降りる思考実験からはじまる論考。

精神分析医は、患者の過去の痛ましい記憶を想起させて、現在の経験のあり方を再編させることで治癒させるが、患者は何が起きたのかわからないし、医者も自分の治療について何も語り得ない。もし語ったとしても、自分のやったこととズレが生じてしまう。

ここで起きていることは、過去の現象を思い起こすことで、経験の中に入っていくという行為である。 ここでの意識は、知るという働きではない。場所を保持する、スキマを開く、躊躇する都という働きである。

つまり、過去をもう一度構築するためにその場を作る。 意識を位相化する。

ここで語られるのは、ランディング・サイトの3形態である。 知覚の降り立つ場 イメージの降り立つ場 建築の降り立つ場

荒川は、このような経験を都市に生きる全ての人間が実行するべきだと語る。

人間はまず宿命にもう一度入り込んで、いかに、そしてなぜなのか、ついにはきちんと知りえないようになっている宿命の中で、自分を位置づけし直さなければならない。(P23)